クールジャパンとして様々な日本の文化が世界に発信され、各地で反響を得ているが、その中でも漫画は大きな存在だ。多くの名作漫画を生み出してきた日本は、漫画を楽しむ層だけでなく、創り出す層も厚い世界でも稀な文化を持っているといえるだろう。今回訪問した株式会社フーモアは、「クリエイティブで世界中に感動を」というビジョンを掲げ、イラストや漫画で人々に笑顔を届け、世の中を幸せにしようとしている企業だ。今年で7年目を迎えた株式会社フーモアを率いる、代表の芝辻氏にお話をうかがった。

約6000名のクリエイターを束ね、日本のエンターテイメント業界を支える

株式会社フーモア 代表取締役社長 芝辻 幹也さん株式会社フーモアは2011年創業のまだ若い会社だ。ここでは約6000名のクリエイターを束ね、エンターテイメントを活用したコンテンツ制作やコンサルティング事業を行っている。マンガ広告、マンガアプリ、ゲームのキャラクターイラスト、スマホゲームやLINEスタンプなど、株式会社フーモアが生み出すコンテンツは多岐にわたる。最近では企業の経営課題をエンターテイメントで解決する「エンタメケーション」事業も好調だ。マンガをプロモーション手段とし、購買へのきっかけに活用するほか、企業のサービスを通じて得たポイントでエンターテイメントを楽しめる仕組みをつくることで利用者増を狙うなど、様々な取り組みを提案している。

株式会社フーモアの特徴は制作において分業制をとっていることだ。クリエイターが自身の得意領域を活かせるチームを編成し、短期間で大量にクオリティの高いコンテンツを作ることを可能にしている。また出版社の作家ありきの作品ではなく、企画ありきでそれにあった作家を充て、幅広いニーズにあわせたコンテンツを生み出すと同時に、クリエイターのキャリアを支援している。「国内のイラストレーターや漫画家は約20万人といわれていますが、その中で仕事になっているのはそこまで多くはいないです。分業化も加えより多くの人が仕事を得られる、クリエイターが食べていける仕組みづくりにも取り組んでいます」と芝辻氏は語る。

好きな女子に褒められたくて、スーパーサイヤ人の絵を描き続けた小学校時代

株式会社フーモア 代表取締役社長 芝辻 幹也さん27歳で株式会社フーモアを立ち上げ、現在34歳の芝辻氏のマンガとの接点は小学校2年生の頃。当時ジャンプに連載されていた『ドラゴンボール』のスーパーサイヤ人を真似て描いたことだ。「当時好きだった隣の席の女子から、その絵がうまいと言われたんです。彼女にほめられたくて描き続けていたら(笑)、クラスメイトにも評判になり、私の描く絵を楽しみにされるようになりました。自分の絵をこんなに喜んでもらえるなんて、と子供心に感動したのをおぼえています」

漫画家になりたいと思った芝辻氏は、中学生で漫画用のGペン、丸ペン、ケント紙を購入し、漫画雑誌へ作品の投稿を始めた。漫画家のアシスタントの道を希望するも、両親の説得により高校と大学へ。「大学は出版社が多いという理由で東京を選びました。理系科目が得意だったので、大学では化学を専攻しました。研究と漫画を両立するつもりが、大学院を卒業する頃になると、ふと自分がどちらも中途半端になっていることに気づいたんです。焦りました」

シェアハウス仲間とベンチャー企業立ち上げへ

株式会社フーモア 代表取締役社長 芝辻 幹也さん「漫画家は若いうちにデビューしないと難しい」と痛感した芝辻氏は、大学院を卒業後、アクセンチュアへ入社。自身の将来に悩み、まずいろいろな事業をみてみようと考え、経営コンサルティングの会社を選んだ。ちょうどこの頃、芝辻氏が住んでいたシェアハウスには、ベンチャーや商社に勤める人がいた。彼らとの接点を通して、当時まだ新しかった米国のグルーポンを倣ったクーポン企業の立ち上げに誘われ、友人3人でシェアコトを創業した。「なかなか上手くいかず事業を半年で売却しましたが、いろいろ勉強になりました。事業は焼畑ではだめで、再現性がないと続いていかない。このときの経験はその後大きな糧になりました」と芝辻氏は当時を振り返る。

その後ベンチャー企業で自分探しをし始めるが、ある日、転機が訪れる。知り合いの社長の結婚式に参加する方の似顔絵を全員分描くと言う依頼であったが、描いて納品をしたら結婚式に来てほしいと新郎新婦から誘われる。描いた似顔絵が席次表に飾られ、それを見た参加者の方々が「似てるね」「似てないね」などと笑いながら会話をしているのを見て、「やはり自分は絵に関わる仕事がしたい」と思うようになり、特にビジネスモデル等は考えず勢いのまま27歳で現在の株式会社フーモアを設立した。漫画家にはなれなくても、昔からずっと好きだった漫画を世界に届けていきたいという想いから始めた。「出版社に属するのと違って、自分の会社なら自分の意志でチャレンジできると考えたのですが、7年目を迎えてもまだなかなかむずかしいですね(笑)。漫画は日本の強みを活かせる分野なので、これからも引き続き世界にチャレンジを続けていきたいと思います」と芝辻氏は熱く語った。

取材: 四分一 武 / 文: ぱうだー

メールマガジン配信日: 2018年2月13日