社名のCasaはラテン語で住まい。今回訪問した株式会社Casaは、賃貸不動産における家賃債務保証事業を核とし、ITを活用し部屋を借りる人と貸す人双方にメリットをもたらす様々なサービスを展開している。2012年に創業後、9年連続で増収を更新している。この会社を率いるのは、現在45歳の宮地氏だ。住宅業を営む両親のもとに生まれ、様々な紆余曲折を経て、自身も住宅業界で経営者の道を選んだ。「商売とビジネスは違う」と語る宮地氏にお話をうかがった。

株式会社Casa 代表取締役社長 宮地 正剛さん貸す側、借りる側、双方に応えるサービスを提供

賃貸の部屋を借りる際、以前は連帯保証人が必須だった。しかし最近では核家族化により、身内に連帯保証人を頼みづらいという人が増えている。親族に頭を下げずとも、保証料を支払うことで連帯保証をつけられる株式会社Casaのサービスは、現代のニーズに応えるものだ。また相続対策などで新築の賃貸住宅が次々と建てられる中で、日本全国で空き家が増加。部屋は増えても借りる人は増えず、入居者がなかなか決まらない賃貸物件があふれている。

こうした物件は初期費用を下げざるを得ないため、礼金をあきらめ敷金を低くすることが多いが、少ない敷金は貸す側にとって家賃滞納や事故が起きたときの大きなリスクとなる。日本全国で820万戸という膨大な空き家が社会問題となる中、株式会社Casaは貸す側・借りる側双方のリスクを下げ、物件の利用率を上げる様々なサービスを提供し、成長を続けている。

経営者である両親への反発

この株式会社Casaを率いる宮地氏は、香川県高松市の出身だ。ちょうど宮地氏が生まれた頃、両親は住宅販売業を立ち上げた。忙しい両親の代わりに、高校教師をしていた祖母が面倒をみてくれた。「いまでは考えられないと思いますが、小さい頃は祖母の職場が保育園のようなものでした。昼間は職員室で過ごし、そこにいる先生方に面倒をみてもらっていたんです」

株式会社Casa 代表取締役社長 宮地 正剛さん経営者としての自負を持つ両親は、礼儀作法や言葉遣いなど、教育に厳しかった。いくつもの習い事に毎日のように通わされた。行儀が悪いと叱られ、剣道の竹刀で母に殴られたこともあるという。中学生になった宮地氏は次第に両親に反発を覚え、自身の将来について考え始めた。自分は経営者にはなりたくない。かといってサラリーマンになるつもりもない。それなら職人だと思った宮地氏は、アルバイトで板前や美容師の世界をのぞいたこともあった。

中卒で働こうと思っていた宮地氏だったが、父に「高校くらいは行ったほうがいい」、そして祖母に「大学に行きなさい」と言われ、東京の大学へ進学した。卒業が近くなりまわりは就職活動を始める中、大学生の宮地氏は以前と変わらず自分の将来を決めかねていた。「自分が働いているイメージを持てなかったんですよね。どうしようかと思ったときに、海外留学の話がありました。兄と姉に続いて、私も留学することにしました。両親の会社の関係でバンクーバーにある家に住めたので、住居には困らなかったんです」と宮地氏は当時を振り返る。

海外留学から帰国後、悩みながらも両親の会社へ

3年間の海外留学。現地では大学に通いながら、両親の関連会社の仕事も手伝った。帰国した宮地氏は、両親の会社で働くことにした。「入社する際、母からは厳しい条件を出されました。社長の息子は社員の2倍働いて当たり前、3倍働いてやっと少しすごいと認められる。お前にそれができるのかと。私はこうした条件を突きつけられると燃えるんですね(笑) やってやろうと思いました」

その結果、知識をつけ、営業マンとして、着実に顧客の信頼を勝ち取っていった。

実績を上げたものの、全く違う世界で商売を学びたいと考え、独立した。「両親の会社で社長の息子とちやほやされていたのと比べたら、全然違う世界ですよね。でもこうした経験のおかげで、世間の目を気にすることから自分が解放されました」

株式会社Casa 代表取締役社長 宮地 正剛さん宮地氏が語る商売とビジネスの違いとは?

その後、株式会社Casaを設立。1年目であっという間に資金は枯渇。絶対絶命の中、融資を引き出す数字の説得材料を作り、なんとか会社を存続させた。

「マイナスからのスタートでした」と苦笑する宮地氏だが、株式会社Casa設立当初は40%だった離職率も現在は6%に。経営が軌道に乗る気配がみえてからは、経営者として社員に会社の将来像をみせるために、会社の理念と未来を考え抜いたという。「新しい社名のCasaはラテン語で家という意味です。住を扱う企業であると同時に、社員がさまざまなことに挑戦できる意欲を育む癒しの場、『家』のような会社になることを目指しています」

自身が言う「紆余曲折」を経て現在に至る宮地氏は、商売とビジネスは違うと締めくくった。「ビジネスは売り買いする仕組み。賢いコンサルの人がいれば、成功モデルを真似ておいしいビジネスを作り出すことができます。それに対して商売は継続です。1回買われても2回目が無ければ続きません。ビジネスよりも難しいのが商売。世の中の価値観が変化しても継続していくためには、売り手・買い手・世間の三方良しの精神が必要になると思うんです」
変化が激しい不動産業界にあって、私たちの誰もが関係する衣食住の住を取り巻く幸せを創り出すことを理念としている株式会社Casaにこれからも期待したい。

取材: 四分一 武 / 文: ぱうだー

メールマガジン配信日: 2017年11月6日