今回は「ライフスタイルに革新を起こし、世界を豊かにする」というビジョンのもと、スマートデバイスと女性にフォーカスし、日本で最大規模の動画マーケティングプラットフォームを運営している株式会社オープンエイトを訪問。おでかけ動画マガジン「ルトロン」をはじめとしたメディア事業でも動画が持つ言葉を超える力を活用し、多くの人の心を動かしている。設立後2年にも関わらず、成長めざましい企業を率いる代表の高松氏にお話をうかがった。

株式会社オープンエイト 代表取締役社長 兼 CEO 高松 雄康さん新しい「体験させる力」を創りだすための起業

現在43歳の高松氏が株式会社オープンエイトを設立したのは2年前の2015年だった。大学を卒業後、博報堂で8年間、化粧品のクチコミサイト「@cosme(アットコスメ)」を運営する株式会社アイスタイルに12年。アイスタイルではCOO(最高執行責任者)に就任し、2012年に東京証券取引所一部に上場を果たした。その後、同社での役割を果たしたと感じた高松氏は、小さい頃からの夢だった起業の準備に取り掛かった。

「何をやるかより、誰とやるかが大事だった」という高松氏は、知人を集めてコアメンバーを結成し、会社が向かう方向を定めていった。「これまでのインターネットビジネスは目的を持っている人の課題を解決するものが多かった。例えばユーザーは、渋谷で美味しい焼肉を食べに行きたいので検索を使うし、欲しい化粧品はすでに決まっているのでその商品の評価サイトを確認する。しかし、目的がない漠然とした生活者の気持ちを動かして行動につなげるのは今でもTVや雑誌の方が得意。これは『体験させる』機能を持った媒体特性とコンテンツをゼロから作り出しているから可能だと思うんです」

「そのような環境において生活者の情報接点のほとんどがスマホになる中で、もはやTVや雑誌でなく、ユーザーの気持ちを動かす新しい体験をネットで実現させることは大きな経済効果を生み出すと数年前から感じていました。そしてそれを実現できるのは動画しかないと」

プラットフォームとメディア、両輪で事業を成功させる

株式会社オープンエイトは、スマートデバイスと動画をキーワードにマーケティング事業とメディア事業を展開している。マーケティング事業は国内最大規模の女性系プレミアム動画アドネットワーク「VIDEO TAP」を主力サービスに、のべ1億ユーザーへ動画広告の配信を実現する。「出稿主は9割TVCMを持つナショナルクライアント。この2年で取り扱いブランドは300を越えました。強みは、圧倒的なターゲットリーチと高いブランドリフト効果。しかも、その実績を蓄積、分析できることです。どういう広告が女性の心を動かし購買につなげることができたのか、その成功の鍵が集まっているんです」と高松氏は語る。

株式会社オープンエイト 代表取締役社長 兼 CEO 高松 雄康さんメディア事業では、「おでかけ動画マガジン ルトロン」を運営している。「ネットで完結するのでなく動画コンテンツで新しい体験を提供してユーザーの気持ちを動かし、外で経済活動を生み出すことができれば、それは大きな需要喚起になるはず。そのために『おでかけ』をテーマにしたメディアをたちあげました。ルトロンのコンセプトは女性にプチ贅沢な体験を提供すること。自分へのご褒美として、おでかけのヒントが集まっているメディアです。配信されるコンテンツは全て一次取材で月1000本を超えており、毎月300万人以上のユーザーが視聴しています」
ルトロンに掲載する動画は、企画以外の取材から撮影編集まで全てマニュアルとフォーマットに沿って制作され、高い品質が担保されている。そして、大量の動画を編集するための基幹システムの開発やAI導入含め、コスト低減するための仕組み化に最も力を注いでいるという。「想いだけではビジネスはうまくいかないですよね。Web企業ならではの仕組みを徹底させることで、成功への近道にしているんです」

小さい頃からいろんなものへの興味を抑えられなかった

高松氏の子供時代についてうかがうと、落ち着きがなかったという答えが返ってきた。「幼稚園のときから落ち着きがないと言われ、それはいまでも変わりません。あらゆることに興味があって、自分でやってみたいという欲求が強いんです。親にダメと言われても、なぜダメなのか自分でやってから判断したい、そんな子供でした」と高松氏は昔を振り返る。スポーツは剣道、柔道、サッカー、体操、水泳、スキー、スノボなどあらゆるものに挑戦。音楽は幼少時にピアノ、広告時代はバンドブームでギターもやった。

ゲーム世代でもあった高松氏は、ゲームで遊ぶだけでなく、小3でMSX、その後PC-8801MAでプログラムを組んで楽しんでいた。こうした高松氏のいろんなことに興味をもつ力は、株式会社オープンエイトを率いる今でも変わらないという。「同時進行でいろんなことを考えているので、僕の会議は話があちらこちらに飛んだりして、参加するメンバーは大変だと思いますよ(笑) 僕はアウトプットが先にくるタイプなのでプロセス構築はほぼ任せています。まわりの社員にはそうしたところを支えてもらっているのかもしれませんね」

株式会社オープンエイト 代表取締役社長 兼 CEO 高松 雄康さん言葉の壁を超える動画で、世界に通用するマーケティング会社を創る

多趣味だった父に連れられ、映画館で観た洋画の感動が忘れられず、エンターテイメントの分野で働くことを夢見ていた高松氏。メーカーの宣伝部にいた父に連れられ、CM撮影の現場を見学したときに、人の心を動かすCMへの興味が強くなった。「当時のCMは単に品物を売るためのものでなく、エンターテイメントでした。そのときの感動を作文に書いたら、なんと賞を取ってしまいました(笑)」
そんな父はメーカーを54歳で退職後、コンサルティング会社を起業した。ところがその1年後、すい臓がんでこの世を去った。「父をみて、自分はやりたいことをやって生きていきたい、その想いが強くなりました。こうして株式会社オープンエイトを立ち上げたのも、父の影響が強いと思います」と高松氏は語る。

CMを作る仕事ができる広告代理店への就職を決意した高松氏は、大学の4年間をほぼ就職活動に使い、見事博報堂への就職を果たした。コピーライター養成学校に通い、広告業界の人達との人脈を作った。その中で、大学生・社会人の就職・転職活動を支援するキャリアデザインスクール「我究館」で学んだ経験が、いまでも高松氏を支えている。「この我究館の運営母体、ジャパンビジネスラボの創業者である杉村太郎さんの言葉は、いまでも私の座右の銘になっています。そのひとつは『確率より可能性にかけろ』。我究館では10年、20年先のビジョンを持つ大切さや、同じ志の友人にたくさん出会えた。しかもその仲間は各業界の第一線で活躍しています」

今後についてうかがうと、「もともとはグローバル志向。動画は言語の壁を越えたビジネスを展開できるので将来的は世界に通用するマーケティング会社を創りたい」という答えだった。「小さい頃、ハリウッド作品に心を動かされた感動を、動画コンテンツでやりきりたい。僕がやれなくても、会社の若いメンバーがいつか実現してくれればいい、そう思っています」と高松氏は締めくくった。

取材: 四分一 武 / 文: ぱうだー

メールマガジン配信日: 2017年9月4日