「不動産の可能性を形にする」というスローガンのもと、不動産に関するデータを収集・分析し、リスクを減らし利回りを最大化するツールを提供しているリーウェイズ株式会社。こちらでは「将来価値分析」というキーワードで、短期的・表面的なデータだけでなく、これまで扱われていなかった膨大な情報を活用し、真に収益を生み出す不動産をあぶりだす。「世界中の不動産マーケットに革命を起こす」と熱く語る、巻口氏にお話をうかがった。

専門職に憧れていた大学時代

3年後の2020年に上場を目指しているリーウェイズ株式会社を率いる巻口氏は、新潟出身。割烹やふぐ料理をはじめとする飲食店を経営する両親の元に産まれた。仕事で忙しい両親の代わりに、元学校の先生で教育熱心な祖母に育てられ、勉強好きな小中学生だった。中学生のとき学業は常にトップクラス、生徒会長に選出された。さらに水泳では平泳ぎでジュニアオリンピックの選手にも選ばれ、運動にも熱中した学生時代を送った。

TVドラマ『スクールウォーズ』が話題となったいた高校時代は、巻口氏もラグビー部に入部。練習に打ち込むあまり、成績は急降下。卒業時には下から一桁の成績だった。大学受験では第一志望に落ち、滑り止めの大学へ。将来について考える中で、漠然と専門職、中でも司法への興味が湧いてきた。「大学とは別に、弁護士になるためのスクールにも通っていました。大学、スクール、サークルの3つをかけもちしていたら生活が回らなくなって(笑)。大学を卒業しても、理想の未来が手に入るわけじゃないという想いが募り、大学を中退して社会に出ることにしたんです」。

リーウェイズ株式会社 代表取締役社長 巻口 成憲さん自腹で機材を購入し、転職先の基幹システムを構築

大学中退を知った親から勘当された巻口氏は、家賃が払えず友人の家に居候。その後、新聞配達、電話営業など、住み込みの仕事に就いた。その間に取得した簿記の資格が功を奏し、不動産の電話営業から経理の部署へ異動となったことをきっかけに、不動産の物件や顧客情報を管理する基幹システム開発の必要性を感じるようになった。「異動した当時、現場では手作業でやっていたので、ものすごく大変でした。業務に必要なシステムは自分で作ってしまおうと思って、ThinkPad230CSやその他アプリケーションを自腹で購入し、ネットワーク構築もやりました。もともとポケコンやMSXに触れていたので、苦じゃなかったですね」。

巻口氏が構築したような不動産情報を管理するシステムは、当時は珍しかった。社内で活用が進むにつれ、「システムを他社に売ってビジネスにしては?」という想いが募ったが、実現しなかった。数年が経過し、一社での業務経験だけでは自身の成長の限界を感じた巻口氏は、転職を決意した。「広く知見が得られる世界四大会計事務所のコンサルティング会社に行きたいと思っていました。無謀にも応募したら、当然全部不採用(笑) 一社だけシステムコンサルティングに力を入れていたので、もう一度だけ面接してくれと再交渉し、システムの知見を評価され、なんとか採用されました」。

コンサルティング会社やMBAの取得を経て、経営の道へ

KPMGコンサルティング(現プライスウォーターハウスクーパース)に入社した巻口氏は、銀行やメーカーを担当。優秀な人材に囲まれる中で、自分に足りないものに気づき、仕事をしながら経営・マーケティング・戦略を学ぶためにMBAを取得した。その後、トーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)に転職し、BSCや組織戦略プロジェクトを担当した。
そして2005年には、巻口氏が1人で基幹システムを構築した会社の元上司がリノベーション事業を展開するリズム株式会社を設立するにあたって、CFOをやらないかとの誘いがあった。巻口氏は専務取締役に就任し、事業の総責任者として、売上高46億円の企業に育て上げた。

そして2014年には、巻口氏が代表となりIT不動産を事業の柱とするリーウェイズ株式会社を設立した。「もともとは三国志の孔明のように、NO.2になりたかったんですが、責任が増えるにつれ、自分で意志決定できる経営者に魅力を感じて、独立を決意しました」。そして新しい不動産取引のオンラインサービス「Gate.」をはじめとする独自のサービスで順調に成長を続け、2020年の上場を視野に入れている。

リーウェイズ株式会社 代表取締役社長 巻口 成憲さんキャリアは自身の経験や偶然によってできるもの

情熱的に邁進する巻口氏のエネルギーの源はなんだろうか。「米スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した『計画された偶発性理論』をご存知ですか? キャリアは自分で作るのではなく、自身の経験や偶然によってできるという考え方です。私は大学受験に失敗したことが、自分のキャリアはおしまいと思うほど、大きなコンプレックスでした。でも興味があることに全力で取組み、経験を積み上げていくことで、いまのキャリアができてきたように思うんです」。

「昔を振り返ると、小中学校時代は物事を深く考えず、18歳頃は根拠のない自信だけがありました。プライドの高さは、いつか打ち砕かれて挫折することがありますよね。でもそこで諦めず、優秀な人たちに囲まれながら、上を目指してやり続けることが、自分をさらに上のステージに運んでくれるんだと思います」。

「これまで出会った人全員が、自分の先生になった」と語る巻口氏。敷かれたレールから落ちないように人生を歩むのではなく、遠回りをしつつもそこで確実になにかを学びとり、自分の力としている生き様は、多くの人の生きるヒントになることだろう。

取材: 四分一 武 / 文: ぱうだー

メールマガジン配信日: 2017年7月10日