間下氏が率いる株式会社ブイキューブは、5,000社以上の導入実績をもつWeb会議サービスを提供している会社だ。企業における会議利用だけではなく、教育、医療、営業、災害対策など、新しいITインフラとして様々な場面で活用されている。日本での導入だけでなく、成長目覚しいアジア各国でのデファクトを目指し、拠点であるシンガポールと東京を往復する間下氏にお話をうかがった。

mashita_1_2現物支給されたIBMパソコンに触れて育った

IBMに勤めていた父の仕事の関係で、家にパソコンがある環境だった。当時まだパソコンは一般家庭にとって身近な存在ではなくとても高価なものだったが、 間下氏は家に帰るとIBM初の民生用パソコンJXで遊んでいた。小さい頃のことはあまり覚えていないというものの、こうした家庭環境の影響で海外やITに 対するハードルを感じることなく育った。

「小学校の頃は自信過剰な子どもだったと思います」と苦笑しながら語る間下氏。勉強はそれなりに出来たが、授業中に先生の間違いを指摘するような生徒だったという。中学に進学するタイミングで受験に失敗。
「受かる気満々だったので、まともに勉強してなかったんですよ。受けた学校はすべて落ちました。滑り止めも落ちてました。自分にとって大きな挫折でしたね(笑)」
落胆した間下氏は、地元にある公立の中学校に入学することになった。

マンモス中学校では生徒会長に

地元の中学校に通うことになった間下氏。生徒数の多いマンモス中学校だけに、生徒たちのバックグラウンドは実にさまざま。この頃、多彩な人材に触れ ることができたのはリーダーシップを磨くよい経験になったという。受験に失敗した間下氏は、中学で猛勉強。成績はみるみるUPし、生徒会長にも任命され た。放送委員をこなす傍ら、勉強と生徒会に没頭する中学校時代を送った。

「中学受験失敗で心を入れ替えた」と語る間下氏は、高校受験に見事合格。私立の慶応高校に通うこととなった。部活は水泳部に所属した。
「練習はきつかったですね。休日は14,000メートル、平日でも7,000メートルを毎日泳いでいました。水泳ってゲーム性がないので自分との戦いなんです。この経験は、ベンチャーに必要な馬力や耐える力を養うことにつながりました。」

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仕組みがわかれば、物事や組織は動かせる

高校では来場者で日本最大の規模を誇る学園祭の実行委員になった。企画運営に興味を感じた間下氏は、仕事に没頭するうちに人がまわりに集まるように なり、自然に組織の中心になっていった。歴史のある学校だけに、運営には学内政治が働く。誰を動かせば企画が実現するのか、間下氏は果敢に組織政治に切り 込んでいった。
「仕組みがわかると物事は動かせる。それは組織でも一緒なんですよね。動かせるようになると益々おもしろくなっていきました」

その後、大学に進学した間下氏は、アルバイトを始めた。自分の力が試せるような面白いアルバイトがしたいと模索していたところ、Webサイト制作の仕事を紹介され、IT業界に足を踏み入れることになった。
「当時はインターネットが徐々に一般化していった頃、まだWeb業界は始まったばかりで混沌としていました。プロといっても学生の集まりである僕たちは、低い予算で高品質のものをつくることができたので、外資を含む大手のクライアントに評価されていました」。
順調なビジネスを背景に、間下氏が大学3年のとき、1998年10月に法人化。ブイキューブの始まりだった。

アジアのITインフラとして、デファクトを目指したい

Web関連の受託事業からスタートしたブイキューブだったが、順調なビジネスの傍ら、間下氏は受託事業だけではつまらないと考えていた。「受託事業 で得た利益を使って世の中に求められるものを作り、それをお金に変える」というビジョンを実現するために、自社サービスとしてWeb会議サービスを開発し た。社内で使用すると社員から言いたい放題の忌憚のない要望があがり、それにエンジニアが対応するというよい循環が生まれ、サービスはブラッシュアップさ れていった。自信をもって世に出せる品質になったことを確認し、2004年に法人向けに販売を開始した。

現在米国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、香港、中国に拠点をもち、グローバルに転換するブイキューブはWeb会議saサービスをアジア のデファクトにすることを目標とし、海外で成功した日本のIT企業としていちばんに名前が挙がる会社を目指しているという。「新しいことを実現するには、 好奇心と忍耐力が必要」と語る間下氏は、自社サービスを通じてアジアに新しい文化やITインフラを構築していくことを考えているという。1年の約半分は拠 点のひとつであるシンガポールにいるという間下氏。日本を含むアジアの国々で共通の価値を創造する活躍を今後も期待したい。

取材:四分一 武 / 文:ぱうだー


このインタビューは、株式会社サーキュレーションの提供する
「知見・経験の循環」をめざす知見共有サービス X-book(エックスブック) との連携企画です。
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メールマガジン配信日: 2015年9月24日