引字氏が率いるシェアリングテクノロジー株式会社は、「独占から共有へ」をキーワードに、ライフサービス全般におけるマッチングを行うプラットフォームサイト「生活110番」を運営している。2006年創業。全国2,000店舗以上の加盟店を束ね、仕事を依頼する一般消費者とそれを請け負う加盟店の双方が満足できる、新しいライフサービスのインフラ創出に取り組んでいる。

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「誰にでも売れる」ではつまらない

愛知県で生まれ育った引字氏。ビジネスの世界に飛び込んだのは19歳の頃だった。当時まだ日本に正規代理店がなかった米国の有名アパレルブランドの 洋服を輸入し、ネットオークションで販売した。人気ブランドということもあり、買い付けたそばから商品は次々と売れていった。顧客は店舗で実際に商品を見 ていないため、ビンテージ加工の新品を中古品と勘違いされるハプニングがありながらも、学生にとってはちょうどよいお小遣い稼ぎになったという。

「誰でも仕入れることができ、薄利であれば簡単に売れる」という仕事にやりがいを感じなくなった引字氏は、まだ日本に正規代理店がなかった海外のア ロマ製品を扱った。当時カナダでは3000円のものが、日本では10000円で売られていたが、それでもほしいという人がたくさんいた。仕入れルートを見 つけ出し、本を読みながらネットショップを構築し取り組んでいくと、1日に数十件の問い合わせが舞い込むようになった。気付いた頃には学生にとっては大き な売上が作れていた。

夢みていたバックパッカー旅行のはずが…

学生時代から商才を感じさせる引字氏だが、実は起業を考えたことはなかったという。将来特にやりたいこともなく、高校時代は自由なバックパッカーの 生活に憧れていた。大学1年生のときに夢を叶え、1人でアジアの旅にでた。タイ、ベトナム、カンボジアをまわった。しかし現地で生活を始めて2~3日です ぐ飽きてしまったという。「想像が膨らみすぎていたのか、実際に生活したら『こんなものか』と拍子抜けしたんですね。向こうには1ヶ月くらいいましたが、 もっとおもしろいものをみつけたいという気持ちが高まって、予定よりはやめに帰国しました」

バックパッカー生活が想像していたよりも自分の心を動かさなかった引字氏は、それまで抱いていた夢を失って急に焦りを感じた。ほかの目標を探したい が見つからない。はっきりと自分がやりたいことを定めてからでないと、就職活動をしたくなかった。目的がないまま就職してもきっとそこで自分にスキルは身 につかない、そう引字氏は感じていた。

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愛知県のベンチャーハウスで経営を学ぶ

自由への志向は、子どもの頃からみえていた。比較的厳しい家庭に産まれ育った引字氏には、厳しい教育環境が用意されたが、勉強は進んでできなかった という。「小さい頃から勉強は自由にやりたいという気持ちが強かったですね。中学も、ものすごく風紀に厳しいところで、さらに自由を求める気持ちが高まり ました。その反動で高校生になってバックパッカーに憧れるような考え方をしたのかもしれません(笑)」

「もっとおもしろいことがやりたい」という気持ちでアジアから帰国した引字氏を迎えたのは、ライブドアに象徴される起業ブームだった。1万円で株式 会社を設立できた時代。当時注目を集めていたITビジネスに興味を持ちました。その後ネットショップ等の経験を経て、愛知県に戻った後、県の運営するイン キュベーション施設入居の審査に合格して愛知県のベンチャーハウスのメンバーとなった。「ここで経営の勉強をしたかったんです。私よりも大先輩の 40~50代の人達に囲まれて、起業に関する様々なことを学ぶことができました」

失敗があったからこそ

順調にビジネスの経験を積んできたようにみえる引字氏だが、実は現在のシェアリングテクノロジー株式会社をやっていくなかで、たくさんの失敗も経験 している。飲食店向けのアンケートを使ったマーケティングシステム、セールスレップマッチングサイト(営業代行サービスと営業をお願いしたい会社とのマッ チングサイト)、モバイルでのバイト情報サービスなどに取り組んだものの、いずれも今ひとつうまくいかなかった。「ビジネスの経験はなくても、以前にネッ トショップ等で売上げたお金は少しあったので、バイト情報サイトなんかは、いきなり300万円もかけて名古屋の地下鉄広告をうったりしてましたね。それだ けかけても問い合わせは3件なんていうこともありました」

その後、全国の不動産会社に入居者向けのさまざまなサービスを仲介するビジネスが一定の成功を収め、その事業を分社化して売却。そこでの経験も活か して現在のシェアリングエコノミー事業を開始。全国に数多く存在する加盟店をつなぐノウハウには、共通するものがあったという。現在シェアリングテクノロ ジー株式会社は社員約50人、名古屋に本社を置くベンチャー企業として売上は順調に伸びている。

「さまざまなジャンルで広がりを見せるライフサービスは、高齢化の中で今後益々需要が伸びていくと予想されます。そんな中サービスの品質も高く、価 格も安い地場の優良業者が大手に集客を取られ時間をもてあましている状況がございます。当社はこれらの業者の非活動時間の有効活用、つまりシェアリングエ コノミーの要素を生かすことで、質の高いサービスをスピーディーにユーザーに提供します。近い将来ライフサービスにイノベーションを起こすことができると 考えております。」と引字氏は熱く語った。若手社長が率いる名古屋発のビジネスにこれからも注目したい。

取材:四分一 武 / 文:ぱうだー


このインタビューは、株式会社サーキュレーションの提供する
「知見・経験の循環」をめざす知見共有サービス X-book(エックスブック) との連携企画です。
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メールマガジン配信日: 2015年11月11日